大阪で香港飲茶
香港行って
(この話は先月の日記),ミーハーな私は飲茶づいて,大阪で香港飲茶を食べられないかと,サーチエンジンで検索する。何件かヒットした中から,心斎橋の大丸の近所の「福 飲茶樓」というお店に行ってみることにする。
「香港でいろいろお世話になったお礼をしたいから」と,Aさんの都合を聞いて誘っておくようにJに言う。で,重陽の節句の日。待ち合わせの喫茶店でコーヒーを飲んでいると,6時半にAさんがいつもの笑顔で登場。3人でやっとしのぎやすくなった大阪の夕暮れを歩く。
お目当ての店は,大丸より一筋東の半ブロック南に下ったところにあった。入り口からして清潔な外観だ。店に入った途端,中国人の二人が,香港の飲茶の店とそっくりの雰囲気!と感嘆するので,連れて来た私としてはいい気分になる。
で,細長い店の奥,中ほどの6人がけのテーブルに案内され,3人でゆったりと座る。後で考えると次々と皿を並べるものだから,これぐらい広いテーブルでないとね。お店の内装はまったくの香港風だが,なにしろ明るく清潔そうで大いに気に入る。
最初に「お飲み物は?」と聞かれたので「ボクは紹興酒!」というと,「お茶を飲みながら食べるから飲茶と言う」とJの突っ込み。が,Aさんが「まあまあ」と言ってくれて,無事オーダー。二人は私には分からない種類の中国茶。
香港の店の多くは,飲茶はランチタイムだけで,夜は他の廣東料理になると聞いていたので,Aさんに確認するとその通りだと言う。正餐として,それも紹興酒飲みながらの私など邪道の極みかも知れないが,まあここは日本だし,ね。
で,パンツスタイルのチャイナがメインのスタッフはほとんどが中国人。私は香港で気に入った「海老腸粉」と「蟹焼賣」だけ頼んで,後の料理のオーダーは,いつものように二人に任せる。香港出身のAさんの廣東語は問題なく通じるのだが,メニューは正字(繁体)で読みも違うので,Jの北京語では,会話部分はともかく料理名が店員に理解されないことがある。そのたびにもどかしそうに日本語の方の料理名で繰り返す。
前菜はワゴンからJが選んでピータン(縦に切った黒い石灰卵)。箸も香港と同じずっしりとしたもの。すべるのでピータンが少しつかみにくかった。店によっては,臭みの抜けていないものを出すところもあるが,ここのピータンは美味しかった。後は例によって,自分がオーダーした二つ以外は,料理名も分からぬままに食べてから材料を推理する。香港で食べて気に入ったのは何も入っていない「腸粉」だったが,この店のは丸々プリプリとした小海老が中に巻かれて入っていて更に美味。前に食べた朝鮮料理の「プルコギ」も良かったが,こういうモチモチとした食感の物は好きだ。日本の料理なら白味噌仕立ての雑煮なんかね。ただしJに言わせると私の「性格がそうだから」と,にべもない。香港の中国医(漢方医)に,あれダメ・これダメと食事制限されたJは,可哀そうに海老もダメで,中の小海老を取り出して私の取り皿に置き「腸粉」だけ食べる。
突然向こうのテーブルを見ろというので横を向くと,スタッフの背中の向こうに細長い管が見える。烏龍茶はあぁいう急須で入れるのだという。初めて見た。
七・八勺ほどの徳利の紹興酒がなくなって,もう一本追加したころから,そろそろまわって来る。で,食べるペースが落ちて来ると,もっと食べろといつものようにJにせっつかれる。ところでお茶の方は,なくなったら急須のふたをずらして置くんだね。そうすると気が付いたスタッフが追加してくれる。この店の「福」の字が上下逆さまになっているので,なぜ?とスタッフに聞くが分からないらしい。が,Jが知っていて後で説明してくれる。「逆さまに倒れる」の「倒」は「到着」の「到」と同じ発音で,つまり「福が到着する」。良い意味になるんだよね。実は最初見たときは,何かの呪術かと思いドキッとしたんですよ。
途中で所用のあるAさんが帰り,後はJと二人。とにかく,いくつも並んだみんな違う種類の料理の皿が,一つ空くとすぐに片付けられ,次の料理が置かれる。で,満腹したのに,Aさんが帰る前に頼んだデザートがまだ残っている。3つあるからAさんの分も食べろと辛党の私に言うJ。無理やり食べた名前の分からない蒸かし饅頭の具は何やら懐かしい味。そうだクリームパンのクリームの味だ。中国茶でいただく。
豪華な雰囲気の内装とスタッフのサービスの店で,3人が満腹しての会計が結構安い。いつもの習慣で,伝票持ってレジに行っちゃったけど,香港の店ではどこでもテーブルで会計したなぁ。Jはレジの向かいの中国式の黒い達磨像がいたく気に入って,スタッフにどこで買ったのかたずねている。大連だか瀋陽だからしい。今度帰ったとき買いに行くのか?
で,店を出てから「しまった。小籠包を食べるのを忘れていた」というのが最後の感想。